妖精達と過ごした夏
8月の初めに出現した劇場も今はその一部を残して消えてしまった。今年は庭のトレリスだけ、プレゼントの様に残っている
月明りに照らされた庭を見渡すと、まだ妖精たちの笑い声が聞こえてくるような気がする
今年の夏はいつもと少し違った。
7人の子供たちの参加で、俄然賑やかになった。
稽古場は子供たちの笑い声で溢れていた。
何処からあんなパワーが出てくるんだろう。
休み時間になると若い役者たちと駆けまわっていた。
髪を汗でぐっしょり濡らし、頬を赤くして。
つられて私も笑う、小櫃ダンサーズも笑顔になる
後半、庭に稽古場を移してからも、笑い声や笑顔が溢れている
子供たちの笑い声からどれだけたくさんの妖精が生まれたことだろう
みんなの笑顔からこぼれ落ちた妖精がどれだけいただろう
そんな妖精たちが月明りの中でくすくす笑いながら踊っている
蜘蛛の精を演じたりん君は、スパイーダーマンが大好きで、蜘蛛になると聞いて大喜びだったらしい。
自ら「スパーイダーマンキッズ」と称して御満悦だった。お母さんは頼んだ以上の衣裳を作ってくれた。きっと親子二人三脚で蜘蛛の精を楽しんでくれたに違いない。
私は蜘蛛の巣の精の役だったので、この夏はずっとりん君と一緒だった。出番のない時も蜘蛛は蜘蛛の巣の膝におさまって、ずっとお喋りしていた。
本当じゃないけれど、家族だねって、蜘蛛一家だよって言ってくれた
どっちがえらいのって聞くから
「そりゃ、蜘蛛でしょ!蜘蛛親分よろしく頼みます」っていうと嬉しそうに笑った。
舞台の上でも蜘蛛を抱っこして走ってた
舞台袖(丸太小屋の裏)の待ち時間、蜘蛛の抜け殻を見つけて大興奮したり、夜空に浮かんだ月をふたりで眺めていたりした。
「照明が消えちゃっても、月が明るく照らしてくれるね」なんて素敵な事を蜘蛛のリン君が言ってたなあ
そんなリン君が終演後泣いている。
衣裳と別れるのが辛いと言って泣いていた。
お母さんが一生懸命作ってくれて、大のお気に入りだったからね。
それまで、本当は衣裳あげててしまおうかと迷っていたのだけれど、リン君をみて決めた。「あげない」
泣いているリン君を抱き上げて、昼間ふたりで見た蜘蛛の抜け殻の話をした。大きくなるために脱いだ殻を捨てて行くんだよって。いつまでも脱いだ殻にこだわってると前に進めなくなるよって。大きくなって戻って来てねって。それまで蜘蛛の巣が預かっておくからって。
リン君はこっくり頷いて泣きやんだ
「オイ蜘蛛、蜘蛛の巣との別れは辛くないのかい」(笑)
とにかく子供達は素晴らしかった
舞台裏で衣裳を着て静かに並んで座っている様子は
まさに妖精そのものだった
一番年長のカナコちゃんがみんなの面倒をみている姿は、マリア様のような女神様のような、観音様のような、やさしさしに溢れていて、ハッとするほど美しい光景だった。
稽古中も背中にあたたいかものが触れたので振り返ると、子供の妖精さんがニコッと笑ってたり、隣にくっついて座ってきたり、なんだか幸せいっぱい貰って嬉しかった
今年もたくさんの方に支えられて、22回目の公演を無事やり遂げることができました。
新しい出会いもあり
このメンバーで過ごせるのはたった一度きり。
かかわってくれた皆さん、作る側、観に来て下さった方、近所の方、裏で支えてくれたすべての方
ありがとうございました。
残暑は続くけれど、私の夏は終わりました。
追伸
この物語を、相当苦しんで生み出してくれた原作者の森さん、脚本の大畑さん、この大切な友人ふたりに
SPECIAL THANKS!!
byケイコ
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